未熟な甲虫の呟き


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薄紅まといて(電子書籍)表紙

電子書籍「薄紅まといて」

 
価格:\300+税
著者:那識あきら
表紙:篁ふみ
発行:パブリッシングリンク

あらすじ

卒業を間近に控えた、楢坂高校3年のホノカの胸中は複雑だった。思いがけない自身のドジがきっかけで付き合うこととなった、同級生で弓道部のヒタカが東京の大学に進学してしまうからだ……。弓道に夢中のヒタカに、その寂しさを伝えられず、意地を張ってひとり悶々としていたホノカ。しかし、早咲きの桜の枝を拾った日から、彼女の周辺で不可思議な現象が起こるようになり…。甘酸っぱい学園ロマンスの影にちらつく、もうひとつの悲しい恋。ひたひたと、ホノカに迫り来る狂気と情念の正体とは? 薄紅色が舞い散る美しい幻想奇譚。(出版社のページより)

目次&冒頭

一  春まだき
二  一輪の花
三  さほかぜ
四  薄紅の衣
五  的射たもの
六  春よこい
 
 冷たい風が、どこか抜けたような声を上げて、ホノカの耳元を吹き抜けていく。
 鄙びた神社の古びた神楽殿の舞台に腰かけて、ホノカは幾度目とも知らぬ溜め息を風に散らした。
 まだ夕刻までは間があるものの、鬱蒼と枝を重ねる針葉樹のせいで、山の中のお社は黄昏時のごとく薄暗い。そんな幽玄な境内の中で唯一木々が途切れているのが、この神楽殿の建つ一角だった。眩い早春の青空が、くすんだ常盤色《ときわいろ》の葉陰を切り取るようにして顔を覗かせている。その見晴らしの良さから、近在の人々はこの場所のことを「階段山の展望台」と称していた。

作者より

創作小説サイト「あわいを往く者」に掲載していた「薄紅まといて」の修正版、44,000字。
奥手を絵に描いたような美術部女子と、朴念仁が服を着て歩いているような弓道部男子の、読んでいてもじもじするようなじれったい学園恋愛物……に、若干の不思議要素を加えた、伝奇物です。
ファンタジーやホラーというよりも、日本昔話っぽい雰囲気を目指しましたので、突拍子もない物語は苦手だ、という方にも楽しんでいただけると思います。

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